イランのガス産業

 イランは、ロシアに次ぐ2番目の天然ガス埋蔵量保有国であり、その量は、イラン石油省のデータによれば、26兆立方mと評価され、全世界の天然ガス埋蔵量(146兆立方m)の18%に達する。イランのガスの埋蔵量の半分は大陸に、半分が大陸棚(ペルシャ湾)のガス田に存在する。イランのガス田は、液化ガスが非常に豊かである。

 イラン石油省のデータによれば、2001年、国内で、1,200億立方mのガスが採掘された。その内、国内需要に600億立方mが消費され、残りのガスは、採油の生産性向上のために採油で使用され、油井で燃やされた。イランにおけるガスの消費者は、3,700万人と産業企業1,800社である。天然ガスの消費量は、次の3〜4年間、毎年平均1%増大するだろう。

 一連の地域のガス化促進の方針を取った同国経済の発展の展望、生態学的にクリーンなエネルギー源の使用に関する課題を考慮して、並びに追加外貨収入の獲得のために、イラン指導部は、国内のガス産業の発展に注意を払っている。

 石油製品を消費するエネルギー部門、産業企業及び輸送手段施設のガス燃料使用への転換問題に、大きな意義が付与されている。

 イランの第3次経済発展5ヶ年計画により、ガスが40%、石油が50%を構成する国のエネルギー・バランス機構を変更する課題が付与されている。ディーゼル燃料を使用する輸送発電機のガスへの転換が規定されている。輸送手段のガス転換プログラムが実施されている。軽自動車及びトラック、市バス及びタクシーが、ガス燃料に転換されている。

 イラン石油省により、2002年、産業、公共団体、農村地、自動車、石油製品及び天然ガスから液化ガスの生産に関する企業の施設のガス消費への転換に関するプロジェクトの実現への40億ドルの割当が規定された。

 イランのガス産業発展の戦略的重要課題に、同国指導部は、隣接国と接する地域でのガス田の探査及び開発を指定している。イラン石油省は、70年代に発見されたカタールのガス田の延長である「南パルス」田の開発及び建設に最大の注意を向けている。

 これは、イラン沿岸から100kmのペルシャ湾中央部の大陸棚に位置する。当ガス田の25期開発が規定された。ここのガスの総埋蔵量は、12兆立方mに達する。当ガス田の最初の8期建設に関しては、既に契約が署名された。これらのガス田では、総計日産2億立方mのガスと、32万バーレルの液化ガスの採掘が予定されている。「南パルス」の残る4期に関しては、提案準備が最終段階にある。

 「南パルス」第1期は、イランの石油・ガス会社「ペトロパルス」により開発されている。同期で生産されるガスは、イラン南部の油田層への注入 及びトランス・イラン幹線ガス・パイプライン(TIMG-3)へのその一部の供給のために使用されるだろう。第2期及び第3期で採掘されるガスの大部分は、国内市場での消費及びトルコへの供給用に使用されるだろう。事後の期で採掘されるガスは、世界市場への輸出供給及びその促進用の石油層への注入のための使用が規定されている。

 他の顕著な天然ガス田は、以下のものである。

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5兆9千億立方mのガス総埋蔵量を有するフゼスタンの「アガ・ジャリ」、「アフヴァーズ」、「マルン」、「メスジェジェ・スレイマン」

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4兆3千億立方mのガス総埋蔵量を有するブシェル及びファルス州の「ナル」、「モンド」、「ナマク・カンガン」、「ジレ」、「アサルエ」、「アガル」、「ダラン」、「ガルダン」

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1兆6千億立方mの評価ガス埋蔵量(1兆3千億立方m確認)を有するペルシャ湾大陸棚の「北パルス」

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5千億立方mのガス埋蔵量を有するホラサン州の「ハンギラン」

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2,300億立方mのガス埋蔵量を有するペルシャ湾、ケシュム島の「サダフ」、「ガヴァルジン」、「フルル」

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2,800億立方mのガス埋蔵量を有するバンダル・アッバス港地区の「ソル」、「サルフン」、「V.ナマク」、「S.ガシュ」

 イラム、ケルマンシャフ、ファルス州、並びにカシャン市地区に、余り研究されていないガス田が存在する。ガスの著しい埋蔵は、「サルマン」(イラン−アブ・ダビ共同で、1,850億立方m)、「シリ」その他数ヶ所の油田に含有されている。

 2001年、イラン南部のバンダル・アッバス市(ホルムズガン州)近隣での新しい天然ガス田の発見に関する報道が現れた。この地区では、日産1,000万〜1,200万立方mを採掘することができる。新ガス田の産業開発は、2004年に始まり得る。

 ガス領域におけるイランの政策の最重要方面は、トルコ、パキスタン、インド、アルメニア、アゼルバイジャンのような隣接国の外部ガス市場への進出、これら市場の飽和後は、欧州及び東南アジア諸国へのガスの輸出である。

 イラン石油相B.N.ザンガネの意見によれば、天然ガスのような生態学的にクリーンな種類の燃料の使用における全国の需要は、常に成長し、イランは、その輸出からの収入獲得のために、その莫大なガス埋蔵量を利用できるはずである。

 この方面におけるイランにとっての緊急課題は、トルコへのガス供給問題の解決である。同国は、容量のあるガス市場であり、イランのガスに好適な欧州への中継路でもある。

 イラン国営ガス会社とトルコの「ブタシュ」社間で署名された協定に従い、イランは、25年間、2,280億立方mのガスをトルコに供給するはずである。ガスが通るはずであるガス・パイプラインの建設は完了し、2001年12月、イランのガスのトルコ供給が始まった。第1段階において、ガスの日々供給割当は、910万立方mに達し、年間33億立方mに一致する。イランは、自国のガスをトルコに供給することも、トルクメンのガスの供給のための中継路ともなることができる。対外・国防政策会議の作戦実施のためも、幹線を利用することが計画されている。

 トルコの外、イランは、アルメニア及びアゼルバイジャンと、自国のガスの輸出に関する協定に署名している。両協定は、2000年の供給開始を規定していた。アルメニアへのガスの年間輸出は、計画中の全長100kmのタブリーズ−ドゥゼリ ・ガス・パイプラインで10億立方m、アゼルバイジャン(ナヒチェヴァン州)には、建設中のホイ−ジュリバ・ガス・パイプラインで4億立方mに達するはずである。

 イランの出版物では、アルメニアへのガス・パイプラインの建設の財政問題に関する情報が定期的に現れている。イラン−パキスタン−インド間のガス・パイプラインの建設プロジェクトの立案が行われている。2010年までに、パキスタンは、500億立方m、インドは2020年までに2,000億立方mのガスの供給を必要とするだろう。

 当プロジェクトの実施可能性の評価に関して、特別研究が行われている。研究は、イラン、パキスタン及びインドのしかるべき組織及び会社が実施している。オーストラリアのBJP社はガス・パイプラインの地上部分を、イタリアの「エスナマプルグチ」はその海上部分の研究を行っている。

 2001年9月中旬、公開型株式会社「ガスプロム」は、テヘランにおいて、自社のイラン−パキスタン−インド間のガス・パイプライン・プロジェクトをプレゼンテーションした。イラン側とは、「ガスプロム」がインド側と当プロジェクトを審議し、インドが同意した場合、多国間で審議されることで合意に達した。最終的に、状況は、2002年中盤までに明らかになり得る。

 2001年、イラン・イスラム共和国石油省は、「バイ・バック」の条件下で外資を誘致して、ガス田の開発及び建設に関する独自のプログラムの実現を継続した。プログラム実施の模範的事例は、1997年にフランスの「トータル」社、マレーシアの「ペトロナス」及びロシアの公開型株式会社「ガスプロム」から成る国際企業連合により署名された「南パルス」第2期及び第3期ガス田の開発に関する契約だった。2002年3月、これら2期の産業運用が始まり、最初のガスが国家ガス・パイプライン網に入った。

 ガス田から100kmのペルシャ湾沿岸に位置するアサルイエ村での当プロジェクトの実現開始と関連して、特別経済エネルギー地帯(SEEZ)「アサルイエ」(時折、「パルス」とも称される。)の創設に関する作業が始まった。ここでは、プロジェクトの最初の10期のための数ヶ所のガス加工工場が建設されるはずである。韓国の「現代」社は、1ヶ所のガス精製複合体の建設を既に行っている。 そこでは、入ってくる原料のガスと液化ガスへの分離に関する作業、ガスの脱塩その他の液化形態の国内消費者及び輸出用を含む供給用天然ガスの準備を目的とした技術作業が行われるだろう。

 アサルイエSEEZを近い将来にイラン・イスラム共和国のガス産業の中心地とし、ここに外個人投資家にとって好適な関税率及び税体制を創出しつつ、ガスの生産、貯蔵及び輸送に関する先端技術を得る方針が取られた。事後の欧州へのその供給の組織のために、液化ガスの貯蔵及び輸送と関連した技術の獲得に、注意が払われている。

 「バイ・バック」の条件下で締結された投資家に対する一連の短所にも拘らず、ガス領域におけるイランとの協力には、カナダ、フランス、イタリア、ドイツ、英国、オランダ、ノルウェー、韓国、中国のような国の会社が、最も積極的な関心を表している。

 英国の「エンタープライズ」社は、「南パルス」の第6期、第7期及び第8期ガス田の開発への分担参加(20%)に関する協定をイランの「ペトロパルス」社と署名した。ノルウェーの「スタート・オイル」社は、「南パルス」第9期及び第10期の開発に関する選定への参加申請を出した。

 過去2年間、ガス政策領域において、イランは、ガス輸出国の行動調整機構の創設問題に顕著な注意を向け始めた。2001年5月、テヘランにおいて、ガス輸出国フォーラム第1回閣僚会議が行われた。会議参加者は、ガス輸出国フォーラムが、ガス採掘国にとって緊急かつ重要な一連の問題に関する意見及び情報の直接交換のための条件を創出することで合意した。フォーラムでは、ガスの探査、採掘、加工、輸送及び販売と関連した問題の審議が計画されている。参加国は、専門家レベルの会合を1年に2回、閣僚会議を1年に1回行うことで合意した。

 イランは、フォーラムを純粋に技術的な問題の解決のための機構と見て、それに基づき、ガスの生産及び売却規模に関してその加盟国に全てを義務付けるOPECに類似した組織を創設できるところまで、問題を持っていこうと計画している。

 イランのガス産業指導部は、その原則ラインとならなければならないのは、その購入、販売及び配分に従事する機構のガス生産分野への進出禁止に向けられた政策であると考えている。イラン石油次官K.アルデビリの表明によれば、ドイツの「ルールガス」タイプの会社が、ガス生産分野に進出すれば、輸出価格の形成問題に否定的な作用を及ぼし得る。

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最終更新日:2004/03/15

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