米軍、攻撃発起点占領

独立軍事評論、2002年2月21日

 強力な対イラク軍事同盟を創設しようとする合衆国の試みは、今日、顕著な成功を収めていない。英国を除き、イラクに対するワシントンの政策を無条件に支持しているのは、中欧及び東欧の10ヶ国、アルバニア、ブルガリア、エストニア、クロアチア、ラトビア、リトアニア、マケドニア、ルーマニア、スロバキア及びスロベニアだけである。しかしながら、ワシントンの新しい同盟国の軍事・政治的及び経済的比重は、きっぱりゼロに等しいと言える。

 他方、サダム・フセインは、自分の軍事的脆弱さを認めつつ (何よりも、このことについては、左図が語っている。)、いくつかの非常に上手い対外政策過程に着手し、国際査察活動に対する国のより大きな公開の準備について表明し、イラクによる大量破壊兵器の保有及び生産を公式に否定した。いずれにせよ、フセインにとって、これは、時間の賭けであり、今日、 彼にとって一日は少なからないことを意味している。同時に、バグダッド指導部は、米国とその同盟国の予想される軍事行動への軍その他の国家機構の準備に関する可能な全ての措置を採り続けている。民間部門の戦争準備の枠内において、 水道システムが破壊された場合、井戸の掘削が続けられている。

 時間は、今、サダム・フセインに味方している。イラク指導者の最も強力な支持者の1人として、近い将来、ペルシャ湾地域の気候すら登場する。問題は、2月末、同国の平野において、気温8〜14℃が優勢な冬が終わることにある。これは、専門家の評価によれば、バグダッドに対する武力行使にとって最良の時期である。 既に、日中の気温35〜40℃及び夜間25℃の暑く、乾いた夏が迫っている。この時期、しばしば砂漠地区 において強烈な砂嵐を引き起こす安定した風(シェマリ)が優勢となる。夏の中盤、風向が変わり、熱砂を運ぶ乾いた熱い東風サムームが吹き始める。5月から9月まで、ペルシャ湾沿岸では、強く、熱く、湿り、耐え難い南東の風カウスが吹く。そのような条件下において地上及び空中で戦うのは、かなり困難であり、時には不可能である。

 それにも拘らず、イラク危機地帯における米国とその同盟国の戦力及び手段の集団は、日々増強されている。正規軍部隊の平時から戦時状態への移行と、全種類の偵察の活発化が継続されている。米軍部隊の大陸部から紛争地区への再編速度が高まっている。特に、危機地域には、米国で唯一の第101空中襲撃師団が輸送されている。組織された予備役の部分動員が行われている。予備役から召集された軍人数は、合衆国において10万人を超えた。専門家は、米軍のそのような展開は、1991年の「砂漠の嵐」以来実施されていないと指摘した。クウェートに駐留するアメリカ軍は、イラクに対する軍事行動への集中訓練を行っている。先ず第1に、彼らは、軍事行動地域の特性に習熟している。

 今日、ペンタゴンは、実施される作戦の広範囲な情報保障システムの創設に関する可能な全ての措置に着手した。保有する宇宙視覚及び電波技術偵察の能力は、現在、RC-135及びU-2S(主として、サウジアラビアのエル・ハルジ及びアラブ首長国連邦のエル・ダフラ航空基地に配備)、並びに艦載及び地上の電波電子偵察システムを含めて、全軍種の必要な偵察戦力及び手段により補強されている。地域における偵察機の総数は、25機に達する。この外、ペルシャ湾地帯の空中及び地上情勢の管制に、ローテーションで空中において戦闘当直に就くE-3 AWACS機と最近危機地域に現れたE-8C「ジースターズ」(カタール、エル・ウデイド航空基地)が合流した。

 日々、イラクに隣接する海域では、米国とその同盟国の海軍集団が増強されている。アラビア海及びペルシャ湾海域には、今、80隻以上が存在し、その内、17隻が巡航ミサイル搭載艦で、海上発射巡航ミサイル自体は、約460発を数える。米海軍水上艦艇中の主要打撃戦力であるミサイル巡洋艦の数は、2倍に増大した。アメリカの5隻の多用途揚陸艦のアラビア海海域到着にも注意を向けないわけにはいかない。そのような数の多用途揚陸艦は、1991年以来、同海域で見られたことはない。

 米海軍とその同盟国の空母航空隊群は、現在、約160機の軍用機が構成している(地中海東部を監視している原子力空母「セオドア・ルーズベルト」の航空群を考慮せず)。米海軍は、160機の艦載機(空母「コンステレーション」に70機、原子力空母「リンカーン」に70機)、英海軍は、16機以上(軽空母「アークロイヤル」)を保有している。

 米海軍とその同盟国の基地哨戒航空隊、電子戦航空隊及び海兵隊航空隊の集団は、約80機を数える。その中には、米海軍 - 約75機(エル・ハルジュ:EA-6B×6機、インジルリク:EA-6B×4及びEP-3E×1機、ディエゴ・ガルシア:P-3C×6機、エル・マタラ:P-3C×2機、エル・ムハラク(バーレーン):EP-3E×1及びP-3C×4機、マシラ:P-3C×1機、エル・ジャベル:F/A-18×4機 、多用途揚陸艦「ナッソウ」、「キルセイジュ」、「サイパン」、「バターン」、「タラワ」:AV-8B「ハリアー」×30機が存在する。その外、オランダ海軍は、エル・ダフラ(アラブ首長国連邦)にP-3C×1機を保有している。

 ヨルダンのムヴァファク・アス・サルチ及びキング・フェイサル航空基地への米英航空隊の出現も注目される。エル・ウデイド(カタール)及びシェフ・イサ(バーレーン)飛行場では、F-117ステルス機が認められた。イラク危機地帯には、今日、米国とその同盟国の約550機の軍用機が集結している。190機が艦載機(多用途揚陸艦の航空隊を考慮して)、360機が地上集団の機体である。

 外国軍の作戦訓練の傾向も、非常に興味深い。間接的に、これは、近い将来、ペルシャ湾地区において、大規模な軍事紛争が展開されることを証明している。特に、2月初め、インド海軍司令部は、ベンガル湾西部において、経済水域の防護に関する艦隊及び沿岸警備隊の各種戦力の協力問題処理を目的とする東部艦隊司令部と沿岸警備隊の共同演習を行った。

 ほぼ同時期、ラ・マンシュ海峡西部において、武装紛争地帯の沿岸地区での戦闘行動実施における海軍戦力による空中目標の遠距離電波探知発見方法の完全化に関する戦闘訓練プログラム「アイ・トレーニング・エクササイズ」による英海・空軍部隊の演習が行われた。

 ハンガリー領土では、2月初め、武装紛争地帯での戦闘行動実施の際の両国地上戦力部隊間の協力問題の処理を目的とした地上戦力のアメリカ-ハンガリー協同演習「アイアン・ストライク-2003」の実施が目に付いた。演習には、約5千人の軍人が参加している。

 少し後、フランス軍司令部は、同国南西部領空において、航空作戦実施の際の戦闘及び戦闘爆撃航空隊の戦闘使用問題の作戦計画の点検及び実地処理に関する空軍演習「ヴォルファック-2003/1」が行われた。

 韓国領空で最近終了した米韓空軍協同演習「コープ・ケース」では、地上戦力の連合集団の直接航空支援の実施計画が処理された。

 サダム・フセイン体制に対する軍事行動の予想開始時期について言えば、中東にとって伝統的に重要な宗教要素も、顕著な影響を及ぼす。問題は、10日前(2月10日)、サウジアラビア(メッカ市 )への全世界(ロシアからも含む。)のムスリムの年次聖地巡礼が始まったことにある。1週間後、イスラム信者は、ムスリムの中で最も崇拝されている3日間の謝肉祭を祝った。合衆国とその同盟国は、少なくとも2月末 まで、やむを得ず一定のポーズを取らなければならない。さもなければ、ワシントンによる各イスラム教徒にとって神聖な行事の無視は、アメリカにとって、既に長期間ホワイトハウスの政策に従っている国を含めて、イスラム諸国中の全同盟国の喪失を意味するはずである。

 今日、危機地帯に創設された軍集団は、米国がサダム・フセインを木っ端微塵にすることを可能にする。しかしながら、対外政策の持ち札は、現在のところ、ワシントンに有利ではない。

イラク危機地帯における米国とその同盟国の海軍集団

艦級

国名 多目的原子力空母 軽空母及びヘリ空母 原子力潜水艦 ミサイル巡洋艦 ミサイル駆逐艦(駆逐艦) ミサイル・フリゲート艦(フリゲート艦)及び警備艦 揚陸艦 指揮揚陸艦及び指揮艦 機雷敷設艦及び掃海艦
米国
(海上発射巡航ミサイル搭載艦×15隻、
海上発射巡航ミサイル×460発以上)
空母
「コンステレーション」
原子力空母
「リンカーン」
  原子力潜水艦×3隻
「コロンビア」
「ピッツバーグ」
「モントピーリア」
ミサイル巡洋艦×6隻
「V.フォージュ」
「バンカー・ヒル」
「チャンセラーズビル」
「サン・ジャシント」
「モービル・ベイ」
「シロフ」
ミサイル駆逐艦×4隻
「ミリウス」
「ヒギンズ」
「ミッチャー」
「ポール・ハミルトン」
駆逐艦×3隻
「デイオ」
「ブリスコ」
「フラッチャー」
ミサイル・フリゲート艦×3隻
「テッチ」
「クロメリン」
「ルーベン・ジェイムズ」
警備艦×1隻
「ボートベル」
多用途揚陸艦×5隻
「ナッソウ」
「タラワ」
「バターン」
「キルセイジュ」
「サイパン」
ヘリ強襲揚陸艦×3隻
「オースチン」
「ダルト」
「ポンス」
揚陸艦×5隻
「トルツガ」
「ラシュモル」
「ハンストン・ホール」
「ポートランド」
「エシュランド」
指揮揚陸艦×1隻
「マウント・ウィットニー」
機雷敷設艦×4隻
「レイベン」
「カージナル」
「アルデント」
「ディクステレス」
英国
海上発射巡航ミサイル搭載艦×2隻、
海上発射巡航ミサイル×16発)
  軽空母「アークロイヤル」
ヘリ空母「オーシン」
攻撃空母
 「アーガス」
原子力潜水艦
「スプレンディド」
「タービュラント」
  ミサイル駆逐艦×4隻
「カルジフ」
「リバプール」
「ヨーク」
「エジンバラ」
ミサイル・フリゲート艦×2隻
「マルボロ」
「チャタム」
ТДК - 4
「サー・ビダイヴァー」
「サー・パーシバル」
「サー・ガラハー」
「サー・トリストレム」
  掃海艦×4隻
「ブロックレスビー」
「バンゴル」
「プライ」
「サンダウン」

艦級

国名 ミサイル駆逐艦(駆逐艦) ミサイル・フリゲート艦(フリゲート艦)及び警備艦 揚陸艦 指揮揚陸艦及び指揮艦
フランス ミサイル駆逐艦×1隻
「プリンモゲ」
ミサイル・フリゲート艦×3隻
「K.D.エルミニエ」
「ヴァンデミエール」
「アコニト」
  指揮艦×1隻
「ヴァール」
イタリア ミサイル駆逐艦×1隻
「フランチェスコ・ミンベリー」
フリゲート艦×1隻
「マエストラル」
   
オーストラリア   ミサイル・フリゲート艦×2隻
「アデレード」
「ダーウィン」
フリゲート艦×1隻
「アンザック」
戦車揚陸艦×2隻
「カニンブラ」
「メヌラ」
 
カナダ   フリゲート艦×2隻
「ウィンニペグ」
「モンレアル」
   
日本 ミサイル駆逐艦×1隻
「あさかぜ」
駆逐艦×2隻
「きりしま」
「はるかぜ」
     
スペイン   ミサイル・フリゲート艦×2隻
「ナヴァラ」
「カナリアス」
   
オランダ   ミサイル・フリゲート艦×1
「ヴァン・ネス」
   
ギリシア   フリゲート艦×1
「イドラ」
   
ニュージーランド   フリゲート艦×1隻
「テ・カハ」
   

合計:軍艦×81隻、海上発射巡航ミサイル搭載艦×17隻、巡航ミサイル×約460発

イラク危機地帯における米国及びその同盟国の空軍集団

航空基地及びその国籍

国名 ディエゴ・ガルシア
(チャゴス群島)
マルカズ・タマリド
(オマーン)
エル・ハルジュ
(サウジアラビア)
エル・ジャベル
(クウェート)
ムヴァファク・アス・サルチ
(ヨルダン)
インジルリク
(トルコ)
エル・ウレイド
(カタール)
エル・ダフラ
(アラブ首長国連邦)
マシラ
(オマーン)
エル・サレム
(クウェート)
シェイフ・イサ
(バーレーン)
キング・フェイサル
(ヨルダン)
アブ・ダビ
(アラブ首長国連邦)
米国 B-52H×10機
(空中発射巡航ミサイル×80発)
RC-135×1機
B-1B×8機
E-З×5機
RC-135×4機
U-2S×2機
E-3×3機
E-8×2機
F-16×24機
F-15×20機
F-15×20機
F-16×24機
A-10×30機
F-16×12機 RC-135×1機
E-3×2機
F-15×15機
F-16×20機
A-10×12機
МС-130E×2機
F-117×2機
F-16×20機
F-15×10機
E-8C×3機
U-2S×5機
無人機RQ-4「グローバル・ホーク」×2機
МС-130H×3機
AC 130U×7機
МС-130E×5機
無人機RQ-1A「プレデター」×3機
F-117×8機 AC-130×4機  
英国   「トーネード」GR.4×6機
「トーネード」F.3×10機
「キャンベラ」PR.9×1機
E-3D×1機
「ニムロッド」МP.2P×1機
「トーネード」F.3×6機   「トーネード」ОК.1×8機
「ハリアー」T.3×7機
「ジャギュア」×10機         「トーネード」GR. 1B×6機
「トーネード」GR.4×8機
   
フランス     「ミラージュ」2000×5機
「ミラージュ」F.1×3機
                  「ミラージュ」IVP×2機

イラク危機地帯における米国とその同盟国の全空軍集団は、2月15日現在、360機以上に達する。

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最終更新日:2004/03/15

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