アラブ情報機関の特徴

 アラブ諸国には、「文民」と「軍人」の2種類の秘密機関が存在する。各々は、独自の任務を遂行する。これらが「同類」、分厚い秘密のベールに包まれていることは当然のことである。

 軍事諜報機関は、国外の軍事性情報の収集を実施する。

 保安機関(「文民」)は、主として、既存の国家体制の擁護に従事する。

 それにも拘らず、最近、これらは、その活動範囲を顕著に拡大し、国内問題だけに従事しているわけではない。必要な場合、これらは、体制の敵の「無力化」のために、国外で作戦を行っている。「文民」特務機関の主任務は、政治指導部の完全な信任を得、軍事諜報部をその支配下に置き、情報共同体の実権を握ることを可能にすることである。

 アラブ秘密機関の創設時から、これらは、先ず第1に、国内外で活動する敵対派対策を使命としていた。しかし、時と共に、これらは、真の国家保安機関に変わった。この現象は、体制を支えている権力の各中心の均衡(又は中立性)の維持に向けられた常時の努力の成果である。

 アラブ特務機関の発展と形成は、様々な方式で行われた。例えば、シリアでは、全く逆に出現した。軍事諜報部は、常に支配的な立場を占めていた。このことは、1949年春にホスニ・ザイムにより実行されたクーデター後、軍が主要な体制の支えとなったことで説明される。それにも拘らず、軍事諜報部の代表は、シリアの歴史で非常に豊富なクーデターに常に参加した。

 体制の自由主義的な性格にも拘らず、レバノンは、1970年秋のスレイマント・フランジェ大統領の就任と共に、そのような進化を経た。レバノンが多数の宗教会派が存在する小さく、弱体な国であることを理解して、新しい国家元首とその支持者は、「外交と権力均衡に基づき」、国家安全を保障することに決めた。この構想に基づき、レバノン軍の主任務となったのは、国内での秩序維持と法律の遵守であった。軍事諜報部は、主として、国内問題に従事している。

 エジプトにおいて、指導的な役割を演じているのは、「文民」特務機関である。1967年及び1970年、特にこれら特務機関の指導者が反体制の陰謀に参加したことは驚くべきことではない。軍事諜報部の同僚は、政府への忠誠心を維持しただけではなく、政府支持を誇示しもした。

 総合情報庁(主要「文民」秘密機関)は、国内外の安全に対して責任を負う。同特務機関の長官は、通常、軍の隊列中から「徴募」される。

 ヨルダンでは、「文民」特務機関が、軍事諜報部を支配している。軍は、体制の支えであるにも拘らず、王室への潜在的な脅威である。ヨルダンで起こった多くの陰謀において、軍人は、常に主要行動者であった。例えば、1957年、特に軍事諜報部のボスが、クーデターの試みに着手した。

 イラクでは、「文民」特務機関と軍事諜報部間のある種の「均衡」が存在する。

 アラブ諸国の「文民」秘密機関が伝統的に国内問題に集中していたと強調するのは適切である。言い換えれば、敵対勢力からの体制の擁護にだけ従事していた。1948年5月15日のイスラエル建国宣言まで、アラブ諸国が独自の対外諜報部を有していなかった以上なおさらである。

 この伝統は、体制維持と国家安全保障の道具としてだけではなく、これらの国の政治生活に対する影響力の武器でもあるアラブ特務機関の性格で部分的に説明される。元秘密機関の指導者が政治活動に従事し始めたとき、しばしば、新旧機能間の境界線を明確に決定し、あるものの他者のへの影響力を避けることが難しいことは驚くべきことではない。

 ちなみに、アラブ特務機関の将校は、かなり頻繁に、政治の頂点に登っている。例えば、エジプトでは、1952年の革命後、約20人が大臣となり、若干の者は、マムドゥフ・サレムのように首相となった。

 国内外の敵からもたらされる危険は、アラブ秘密機関が防諜活動に著しい時間と努力を費やすことを強制している。近東諸国を震撼させたクーデターと革命は、体制を脅かす要素の摘発を防諜部指導者に強制している。

 アラブ諸国の「ムハバラート」は、国内敵対派及び外国特務機関の地下活動と対峙する。このために、防諜部は、防勢及び攻勢機能を遂行する。一義的な様相は、安全保障である。二義的な様相は、対スパイである。

 防諜部の主任務は、敵(国内外を問わず)が国家利益に損害を与え、国家機構に浸透し、秘密文書へのアクセスを獲得することを阻止することである。このために、国家ポスト候補者の検査、公式又は秘密検閲、何らかの反政府地下活動が行われ得る各層及び各集団に対する監督等、非常に様々な手段が使用される。特務機関職員又はエージェントは、情報の収集、体制への危険となる人物の摘発のために、これら機構に浸透する。

 既に50年余り、イスラエルは、アラブ秘密機関の関心の主要対象である。彼らが関心を有しているのは、各政党の機構、国内の政治勢力の配置、政府の計画、軍、軍事ドクトリン、経済、外国国家との協力、離散ユダヤ人との関係、シオニスト組織等である。

 アラブ特務機関にとって、「シオニストの敵」よりも大きな関心は、アラブ諸国でもある。これは、「アラブの冷戦」と呼ばれるものの一部であり、しばしば、イエメン、レバノン、モロッコ及びアルジェリアにおいて「熱戦」に発展した。「兄弟」国の体制転覆に対して若干のアラブ秘密機関により注がれる努力は、決して弱まることなく、積極性に関してイスラエルに対して向けられた活動を凌駕すらした。

 アラブ特務機関の主要情報源の1つは、外国マスコミにより発表される報道の流れである。しかし、この情報は、明らかに不十分である。それ故、「ムハバラート」は、諜報情報の収集をより高いレベルに上げることを求めつつ、時折、近東から離れた国外に「基盤」を創設する。この基盤は、イスラエルのために働くエージェントの摘発を可能にするだけではなく、ユダヤ人国家、並びにアラブ諸国の情報入手のための機会を与える。

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最終更新日:2004/03/15

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