2.イラン・イスラム共和国の国家権力の戦力ブロック

 戦力ブロックも、相互浸透する階層システムの形で表現され得る(表2.参照)。

表2.

最高レベル
ラフバル
国防・軍支援省 参謀本部/最高司令官本部 情報・保安省

第2レベル

最高会議:総司令官、参謀長、政治局長

第3レベル

法秩序警備軍本部 陸・空・海軍統合本部 イスラム革命防衛隊本部

 最高レベルとは、最高国防会議特別作戦会議を通して、最高司令官の権限を行使するボスである。

 第2レベルは、イスラム革命防衛隊の行政及び経済保障(装備の調達及び軍事産業を含む。)を担当する国防・軍支援省、民間人中の外国の諜報活動及び武装敵対派対策を担当する情報・保安省と、参謀本部である。

 最高司令官本部たる参謀本部は、米国の統合参謀会議型に構築され、参謀総長の指導の下、3主要軍種参謀長から成る会議により統制される。参謀総長は、作戦計画立案を実施し、全軍種の行動を指導する。参謀本部の局、例えば、防諜、情報又は麻薬対策局は、全戦力機構の 系統局の指令調整を実施する。

 第3レベルとは、内務省法秩序警備軍(行政・運営関係において、大統領に繋がる。)、及びイスラム革命防衛隊主要戦力機構最高会議である。会議の通常の構成は、総司令官、参謀長、政治局長(ボスの代理人)

 各機構の本部は、その担当領域の計画立案を実施し、軍とイスラム革命防衛隊の高官が指揮する軍管区の統合本部を通した独自のラインにより、各々その計画を実現する。

 イラン・イスラム共和国軍は、最も単純な組織機構であり、単一の統合参謀本部を有する陸軍、空軍及び海軍から成る。

 イスラム革命防衛隊は、陸軍、空軍、海軍、特殊任務戦力(「アル-コドス」−「エルサレム」)並びに後備軍「バシジ」(「サズマン-エ・バシジ-エ・モスタゼフィン」−貧民後備組織)の訓練、動員及び行動を担当する領域部隊から成る。

 内務省秩序警備軍は、反イスラム活動(麻薬中毒及び売春を含む。)を担当するイスラム革命委員会、市街地における法保護活動を担当する警察と、農村地における法保護活動、国境及び重要交通路の警備を担当する憲兵から成る。

 総司令官と政治局長は、ラフバルにより任命される。政治機関の全系統が全て軍人ではない 聖職者から成るため、社会主義諸国のような明らかに破壊的な役割を演じない。総じて、文民部門と異なり、最高軍事機関は、統一原則により、調整されて機能する。その複雑度に関して、このシステムは、対比される。

 しかしながら、イラン・イスラム共和国の戦力ブロックは、イランが地域超大国となるのを許さないいくつかの重大な機構的及び資源的問題を有している。

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軍が今に至るまで隣国と比較できる量の近代的軍事機材を装備することを許さない手段の重大な制限

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将校要員の地域間ローテーション・システムの欠如は、戦闘訓練を犠牲にして、駐屯地で小ビジネスに従事する将校の「成長」を不可避的に続けている。当該システムの存在は、中国及びインド等、「同郷関係」及び地域化問題にはるかに脆弱な国の軍が今まで保持され、活動的に発展することを可能にした。

戦力ブロックにおけるイスラム革命防衛隊の特別な地位

 通常、イスラム革命防衛隊は、アラブ体制の親衛隊や、20世紀の欧州のイデオロギー全体主義国家のSS及びゲシュタポと比較される。しかしながら、現実には、イスラム革命防衛隊は、これら両制度と顕著に異なり、イラン独自の機関である。アラブ体制の親衛隊と同様、イスラム革命防衛隊は、その機材装備に関して、軍に著しく優越している。例えば、イスラム革命防衛隊空軍は、軍が完全に欠いている作戦・戦術ミサイル部隊を含んでいる。しかし、アラブの親衛隊とは異なり、その編成下には、後備軍と著しい作戦機関が存在し、戦時には、国境警備に関する任務が委任される。社会主義諸国の国家保安部との違いは、イスラム革命防衛隊の作戦部隊が主として国外で活動し、イスラム革命防衛隊は、戦時にのみ国境警備を実施することであり、国内保安目的のためには、先ず第1に、後備軍「バシジ」が行動するものと予想される。

 イラン指導部は、恐らく、イスラム革命防衛隊の枠内への政敵に対する捜査活動機能、最も戦闘能力のある部隊及び国境警備の中央集権化に意識的に進まなかった。恐らく、そのような集中は、体制の脆弱性と低い正当性の徴候並びに「冷たい内戦」の布告 として、住民大衆に受け取られたはずである。

 その結果、イスラム革命防衛隊は、外敵からの国の防衛問題において軍と重複し、若干の場合、軍の機能を引き受けもするため、完全な親衛隊ではない。同時に、イスラム革命防衛隊は、最良の召集割当と兵器・軍事機材を貪り、戦力機構の相互対立を生まないわけにはいかない。イスラム革命防衛隊は、他の戦力機構に対する組織的長所を有さず、その地域部隊 を通してより、同程度、恐らく、大きく地域化の傾向を有しているため、内戦の場合に対しても最適化されていない。

 イラン・イスラム共和国の軍事的弱点は、1998年のイラン外交官の殺害後、イランは、国境に20万の集団を展開させたが、タリバンから意味のあるいかなる譲歩も得られず、最初に和平を提案せざるを得なかったアフガニスタン・イスラム国との紛争において、明白に現れた。この弱点は、同国指導部により認識され、防衛能力向上の非在来型手段によりそれを補償しようとしている。その本質が最小の出費で防衛潜在力を向上させる試みにある2つの非在来型機構に分けることができる。

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1つ目は、世界の石油輸送の20%が通るホルムズ海峡の航行の保証された封鎖能力の達成にある。このようにして、イランは、軍事的に優勢な隣国の経済に脅威を創出できる状態にある。このために、潜水艦、海上及び地上発射型対艦ミサイルが調達され、 著しいインフラが創設され、北朝鮮製とロシア製の作戦・戦術ミサイルの調達が予定された。

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2つ目は、その性格がテロリズムとイランのイメージを長い間結び付けた国際破壊活動へのイラン・イスラム共和国の関与である。

イラン・イスラム共和国とテロリズム

 テロ行為へのイラン・イスラム共和国の国家機構の直接参加は、イランの左翼テロ集団の活動分子及びクルド人指導者 の情報・保安省職員による約500件の暗殺事例に代表される。これら行為の大部分は、イラク北部で行われた。1992年のベルリンの「ミコノス」レストランでの4人のクルド人の暗殺のため、広い社会の注意がそれに引き付けられた。この行為の結果、S.シャラフキンジが除去され、その死により、在イラン・クルド人の政治運動は、首がなくなった。しかしながら、ドイツ警察の捜査と司法行為は、1997年、4人のテロ行為実行者の逮捕と起訴をもたらした。加えて、裁判所は、当時の情報・保安相の逮捕令状を交付した。

 しかしながら、イラン・イスラム共和国にテロ国家の評判をもたらしたのは、予想されるテロリスト及び分離主義者に対するこれらの行為ではなく、レバノン、スーダン及びボスニアにおける集成主義者の国際ネットワークの活動へのイスラム革命防衛隊の作戦及び特殊部隊の参加 だった。この際、テロ又は当該行為の声明へのイラン人の直接関与の事例は知られていない。集成主義者を支援しつつ、イラン・イスラム共和国は、隣国と潜在敵の資源を別の地域に誘導しようとしている。この活動の統制のために、特別作戦会議が設置され、その業務は、最高国家安全保障会議 を通した実施と比較して、情報漏洩の可能性を低下させている。

 プレス上では、ベッカー峡谷(レバノン)に基地を置く反イスラエル組織「ヒズボラ」(アッラー党)の補給に関するイラン・イスラム共和国の活動が定期的に報道されており、この際、 対戦車ミサイルと多連装ロケット発射機用のロケット弾の納入が言及されている。イランは、毎年、「ヒズボラ」の財政に1億ドルを送っていると考えられている。中近東地域 に1つでも同盟国を有するために、イランは、シリアのアラウィ人少数派政府に著しい経済援助を提供している。毎年、テヘランは、年間約100万tの石油をダマスカスに供給し、炭化水素の他の供給は、特恵価格で実施されている。極めて有力な理由だけが、自軍の近代化 に不足を感じている条件下において、イランに不足する資源をこれほど気前良く支払わせているのは明らかである。

 イランによる集成主義者ネットワークの出資の技術は、1992〜1995年の内戦期間におけるボスニア・ヘルツェゴビナ共和国軍の装備と協力 と関連して、最も良く知られた。特に、いわゆるH.チェンギチの「グループ」又は「ネットワーク」の活動が詳細に報道された。A.イゼトベゴヴィッチ大統領の古き盟友、ボスニアのムラー、H.チェンギチは、スーダンの人道組織Third World Relief Agency(TWRA)のオブザーバー会議のメンバーだった。TWRAの口座には、湾岸諸国からの寄付金が蓄えられ、後に、第三国で購入されたか又はイラン・イスラム共和国軍から引き渡された武器(ソビエト製及び中国製 )の納入支払口座に送金された。資金は、その大部分が集成主義組織からのムジャヒディン及びボスニア・ヘルツェゴビナ情報庁職員だった第7イスラム旅団軍人に破壊工作技術を教育したイスラム革命防衛隊軍人の教育活動の支払にも支出された。

 終戦後、テヘランによりボスニアに創設された機構が、西側軍事及び諜報機関側から完全に破壊されたことは注目に値する。一連のイスラム革命防衛隊隊員とその生徒は、1996〜1997年、SFOR軍により逮捕され、前者は、後にボスニアから追放され、親イラン指向の活動家は、ボスニア・ヘルツェゴビアの戦力及び政治機構から一掃された。

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最終更新日:2003/08/24

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